カメラアングルごとのカット割合について

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    作品を作っていく上で事前ウェブロケハンというものをしているのですが、
    背景資料のためにGoogleストリートビューである程度撮影しに行くロケーションを見てます。

    最初の頃、1時間くらいぶっ通しでビューをあおりやふかんで建物も見ながらグリグリ動かして見てると、
    だんだん気持ち悪くなって体調が悪くなることがありました。
    これは今でもストリートビューに長時間一点集中してるとたまに起こります。

    いわゆる船酔いや3D酔いみたいなものです。

    これは人体の自己防衛機能であり、視覚と三半規管で認知されるバランスが異なって
    脳が幻覚を見ていると誤認してしまう、というのが原因みたいです。


    この点から映像演出を突き詰めている中、思い当たる節が出てきました。

    「あおりとふかんのカットが多すぎると、3D酔いに似た不快感が潜在的に溜まっていくのではないか」

    というものです。


    そこで実際の映像作品から、違和感すら与えない心地よい適切なあおりとふかんの割合を知りたくなりました。
    (あおりとふかんが説明のためのもの、飽きさせないほんのすこしの調味料、という基礎であると理解した上で見てみます)


    以下、良いと感じたドラマ1話分に対して、
    全カット数に対するあおりのカット数、ふかんのカット数、水平のカット数を調べました。



    ○今回の調査の定義

    ・20〜30度以上くらいをあおりとふかんにした(真下映すのもふかんで)。
    (30度はエスカレーターくらいの傾斜)

    ・水平とカウントしたものは〜20度あたりの水平に近いふかんあおりで映しているのも少しあります



    ○結果

    AとBは別監督、同じ尺。


    ・作品A

    あおり:15%
    ふかん:25%
    水平:60%



    ・作品B

    あおり:10%
    ふかん:20%
    水平:70%




    ○内容考察


    ・あおり

    会話ラリーの視線カメラによる高低の差であおりふかんの切り替えが多いとき以外のあおりはかなり少なめ、
    圧迫感、威圧感が出てくるのが理由ですかね。
    視聴者的に絵的に首が疲れる潜在的な印象を与える可能性もあるだろうし、
    物理的な点でもカメラで撮影で姿勢的にあまり傾けたくない、というのもあるかもしれません。

    人物、建築などの立ち位置で高低差による会話時、下から回りこまないと顔が映せない時、
    人物の威圧的意味合い、
    それ以外に感情的意味でうつむき気味の人物の顔をはっきり映して辛さなどを強調する時にも使われるようです。

    例えば建物で2階とか階段があるとふかんあおりが多くなったりするので(必然的に)、
    実際のところ撮影現場の高低差によっても割合変化が大きいと分かります。



    ・ふかん

    それに対しふかんは、会話ラリー視線以外に引きの絵でも多々見られ、引きの絵全体の1/3前後くらい。

    家族全体を映し入れるなど、大人数をカメラ内に収める時は水平だと難しいときはふかん気味で全員を映すのが多いです。

    狭い部屋で座ってる時はふかんが多く、物理的制約、下にあるものはふかんという基本的なものなんだと思います。



    ・水平

    水平のときは連続水平のカットに徹する感じで、人物の高さや建築上高低差あるときはあおりとふかんが出てくる、
    と基本を抑えると、もうほとんどが水平のようです。画面が安定しますね。

    水平が多い場所中心なら、変にあおりとふかんを入れない感じですが、さすがに水平だけだと飽きるので
    意図的にあおりとふかんの人物ショットを入れていくのが見られます。
    その場合でもうるさくならない程度に、意味のあるあおりとふかん(感情的要素が強い)で入れられる傾向があります。
    しかし入れるのはほんの数カット。


    ○あおり、ふかん、水平のカット割合についてまとめ



    あおり 10〜15%
    ふかん 20〜25%
    水平 60〜70%



    2つのサンプルですがかなり近い割合が腕の良い監督別でもいい具合に合致したという点については、
    経験を積んだプロの感覚というものが使える数値として得られたと思います。
    (もちろん今回以外の世にある作品ごと、監督ごと、数字の傾向は微妙に違うと思います)


    あおりとふかんをやたらめったら意味なく使うことはしない、という点も確認出来ます。
    特にあおりは「意味のないあおり」は本当に少ない。
    視線の高低差、上にあるものを映す、物理的制約、これ以外は決める時にだけに使う感じのようです。

    それ以外に使い過ぎると、中二病的な印象(作り手の自慢気な押し付け)を与えるような危険性すら感じます。
    そもそも人を見上げるという行為自体が視聴者へ潜在的侮辱感や圧迫感を蓄積させていきNGなんだと思います。
    もともと「煽り」という言葉の通り、カメラでは意味が異なるとしても、逆なでする意味合いが語源からもあるように、挑発的な要素であることは分かります。

    追記:あおりは役者がブサイクに見えるから、という一つの原因もあるかもしれません。
    鼻の穴が見えたり、ライトの影落ちが深く見えたり(あおりのアングルだけライトの位置方向を変えるのは不自然なためそのまま)、
    輪郭から全体の造形ががらっと変わるので。
    3Dキャラでカメラをあおりにするとそれが顕著に出るためあえて顎の長さを調整したり、シャープにして整えることをするし、
    巷で女の子が写メで皆正面顔でふかん気味撮影ばかりするのも分かります(あおりはほぼ無い)。


    その点、ふかんというのはカメラに収めやすい全体像の把握のために使いやすかったり
    見下げる行為自体が人間の潜在的支配的欲求を満たすものとも捉えられ、
    少々多めに使っても大丈夫なんだと思います。
    それが数値として実際に出てきました。

    あおりの2倍くらいのカット数で使える、
    水平の1/3くらいのカット数で使える、
    全体の2割ちょっとのカット数で使える、

    と指針として覚えておき、絵コンテでのカット配分(水平への修正、削りや追加)でこの値に寄せていくと良いかもしれません。


    以下%はふかんの割合の中での割合で、作中の該当カット数で測ってます。

    ふかんの中の配分に関しては、

    ・会話の人物の高低差があるとき:80%
    ・下にあるものを映す時:4%
    ・全体の人物を収めるとき:8%
    ・水平が続いた時の飽きさせないための+α:4%
    ・感情的意味:4%



    などで、



    あおりの中の配分に関しては、


    ・会話の人物の高低差があるとき:90%
    ・上にあるものを映す時:5%
    ・水平が続いた時の飽きさせないための+α:3%
    ・感情的意味:2%



    などとなっています。


    この数値から60分の映画があるとして、30分以上があおりとふかん(その中でもあおりも半分くらい)とかだと
    個人差はありますが3D的な酔い(=生理的な拒絶感)が発生しやすいと思われます。
    (自分が60分間Googleストリートビューを見てる時に半分以上の時間あおりとふかんで
    ぐりぐりして気持ち悪くなったときのも合わせて考えて)
    3D酔いを克服して慣れた人であっても、それは潜在的な疲労として溜まっていくのではないか、
    →違和感やストレスとなっているのではないか、という説
    にしておきます。


    特に動画でのあおりふかんのパンニングは数秒限定、かなりの短時間に限定するのが良いですね。
    映像作品でも固定カメラによる静止画みたいなものとしてアングルが切り替わっていくものですが、
    固定アングルでも長時間視聴するなかでカメラアングルが細かく目まぐるしくパンパン切り替わりすぎると、
    潜在的な視覚と三半規管で認知されるバランスが異なる違和感を与えていきストレスとなる
    、と仮定しています。


    三半規管、動体視力、疲労などといった観点から見ると、
    今回のあおりふかんのカメラのピッチング割合(ヨーイングやローリングでも関与すると思われます)は、
    年齢別に対しても生理的に与える影響があると感じてます。

    若年層(20代以下)に関しては多めでも良いんですが、
    それを過ぎた年齢層になってくるほど激しいピッチングは拒否しやすく動きの安定した絵を好んでくる気がします。
    年齢による体力の衰えなので個人差はもちろんあると思います。


    といわけで作品のターゲティングによってもカメラアングルの割合や配分(対時間のカット密度)などの考慮が必要、
    と頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。



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